拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

アオモリ(開高健『日本三文オペラ』)

備忘録的に。
院の授業で丸川哲史『帝国の亡霊』(2004年)を読んでいたのだが、開高健『日本三文オペラ』(1959年)を論じた箇所があった。というわけで、たぶん25年ぶり位に『日本三文オペラ』をKindle版で読んだ。
ところで、丸川さんは、済州島出身の在日コリアン(だが他の在日コリアンとは一緒にしないで欲しいと自ら語る)ハンセン病者、自称青森県出身者の「アオモリ」に注目している(さまざまな議論ができると思うけれどそれは割愛)。なぜわたしが丸川さんの著書のこの箇所・この議論に注目したかというと、今年中間論文(修士論文)を書いた留学生が、15年戦争期の生ー政治について議論するために北條民雄を扱っていて、わたしも北條作品をそこそこ読んだからである。
それにしても、開高健の作品に「アオモリ」のような人物が出てきていることを、四半世紀前に読んだ時には全く気づいかなかったことに軽くショック。あるいは気づいていても、現在に至るまでに忘れていた、問題化できていなかったということか。四半世紀たてばわたし自身も変わるし読み方も変わる。批評の流儀も変わる。それを改めて実感した次第。毎度のことではあるけれども。