拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

松本零士『ザ・コクピット』全8巻、小学館、1996?年

ありました、ありました。整備士たち「あいつは試験機のテストパイロットなのに(背中を丸めて縮こまって)○食みたいな格好でメシ食ってるな〜」(中略)女性テストパイロット「でも私はそういう人が好きです」、社長「人の食物とはおもえんものをくっとった」云々という漫画。『ザ・コクピット』8巻に入っていた。ただ、さほど面白いものでもなかった。残念。
全巻通読してみると、やっぱり1〜2巻の、特に「音速雷撃隊」が白眉、ということになるのかな。桜花という存在自体が戦争の悲惨さの象徴みたいなものだから、これをテーマにして酷い出来の漫画は描いちゃいかんという作者の気迫は伝わってくるのだ。しかし、松本さんは作品の最後のコマで、「有人ロケット戦闘機の寿命は短かった、Me163と桜花だけだった」云々と書いているが、この両者は一緒に並べちゃいかんのではないか。Me163は10分しか飛べない危険なロケット機だったけれども、ちゃんと帰還することを前提としていたわけだが(Me163の話も『ザ・コクピット』にある)、桜花は帰還の可能性ほぼゼロの純粋な特攻機、というか人間ミサイルだったんだから。
ただ、「敵も味方もバカだ」という松本さんのメッセージは本当にその通り。1974年の時点で『週間少年サンデー』を読んでいた少年たちは、この漫画連作を読んで、どう思ったのかな。私より一世代上の人たち、今の40代前半の中年だな。
もう一言。水木しげるの戦記物漫画を読むと、おそらく朝鮮半島出身と思われる従軍慰安婦の存在がきちんと描き込まれているが、『ザ・コクピット』には、ない。日本名の従軍「看護婦」は出てくるし、その内の一部はおそらく「慰安」もしていたのだろうという描き方はされているのだけれども。