拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

模擬授業への補足

模擬授業への補足

 

 午前と午後の模擬授業に参加されたみなさん、それぞれ2時間もお付き合いくださいましてありがとうございます。みなさんが大学での授業の雰囲気を少しでも感じることができたとすれば望外の喜びです。

 回収した「回答用紙」54+54人分を読み、回答を集計しました。複数の回答を記入している人もいましたが、データの整合性などは考えずに集計しています。

 回答者数の多いものから並べて生きます。

 

ジブリ作品(『風の谷のナウシカ』、『となりのトトロ』、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』)(15)

ドラえもん』(12)

アンパンマン』(10)

ディズニー作品(『三匹のこぶた』、『アラジン』、『シンデレラ』、『ライオンキング』)(6)

ドラゴンボール』(6)

ポケモン』(6)

ちはやふる』(5)

ONE PIECE』(5)

手塚作品(『火の鳥』、『ブラックジャック』)(4)

プリキュア』(4)

ボーカロイド(4)

名探偵コナン』(4)

 

 こうしてみるとジブリ作品はやはり強いですね。単独の作品では『ドラえもん』と『アンパンマン』も強い。この三つの中では『ドラえもん』が「時代」「地域」「民族」も超えている(ケースもある)ので、最強の古典ということになるでしょうか。もっとも、10年後、30年後、50年後どうなるかはわかりません。

 意外だったのはディズニー作品です。『アナ雪』もありましたから、もっと上位にくると思っていました。もう一つ、『ちはやふる』が手塚作品より上位にきていることは驚きました。アニメと実写映画が高校生のみなさんにも受けているということでしょうか。これは「これから古典になるかもしれない」枠の有望株?でしょうか。

 

 以下は3回以下の言及しかなかった作品です(順不同)。→『刀剣乱舞』、『文豪ストレイドックス』(2)、『Fate』、『怪盗クイーン、かぐや姫は夢を見る』、『宇宙戦艦ヤマト』、『タイタニック』、『たけくらべ』、『ドラゴンクエスト』(3)、『サマーウォーズ』、『トムとジェリー』(3)、『セーラームーン』(2)、『スラムダンク』、『ReLife』、『氷菓』、『銀魂』(3)、『フルーツバスケット』、『鬼灯の冷徹』、『七つの大罪』、『源氏物語』(3)、『人間失格』、『豪鉄ガンライザー』、『シルマリルの物語』、『古事記』、『日本書紀』、「鳥獣戯画」(2)、『はらぺこあおむし』、「風神雷神図」、『イナズマイレブン』(2)、『キングダム』(2)、『三国志』(3)、『西遊記』、『水滸伝』、『刃牙』、『マリオシリーズ』(4)、ファミコンのソフト(『ドンキーコング』)(2)、『Naruto』、『Re:ゼロから始める異世界生活』、『サラダ記念日』、『クレヨンしんちゃん』、『アルスラーン戦記』、『ルパン三世』(3)、『ゲゲゲの鬼太郎』(3)、『ぬらりひょんの孫』、『夏目友人帳』、『妖怪人間ベム』、『ゴジラ』、吉本新喜劇、『妖怪ウォッチ』(2)、『星の王子様』、『東京喰種』、『君の名は。』、『MOTHER』、スピルバーグ監督の作品、『東方Project』、東野圭吾ガリレオ』、『薄桜鬼』、『ルドルフとイッパイアッテナ』、『緑山高校』、『シティー・ハンター』、『スマホを落としただけなのに』、ラブクラフトの作品(クトゥルフ神話)、『スターウォーズ』(3)、クリスティーの作品(『そして誰もいなくなった』)、『僕のヒーローアカデミア』、赤塚不二夫作品(『天才バカボン』、『おそ松くん』、『おそ松さん』)(3)、京アニの作品、『くまのプーさん』、『100万回生きたねこ』、『ファイナルファンタジー』、『小右記』、『栄華物語』、アンデルセンの作品、『イソップ物語』、『サザエさん』、『科学忍者隊ガッチャマン』(&『ガッチャマンクラウズ』)、『聖書』(「ノアの方舟」)、水曜日のカンパネラ「桃太郎」、山下達郎「クリスマス・イブ」、「残酷な天使のテーゼ」、校歌、HoneyWorksの作品、中島みゆきの曲全部、ベートーベンの作品、バッハの作品(2)、モーツァルトの作品(2)、久石讓の作品、チャイムの曲、バレエ作品(チャイコフスキー)、「花は咲く」プロジェクト、J-Pop

 

 これらの作品の中で、『聖書』(「ノアの方舟」)については触れておきます。キリスト教ユダヤ教聖典である旧約聖書新約聖書、これは文学作品ではありませんが、キリスト教世界宗教になったこともあり、日本にすむ非キリスト教信者でも、いくつかのエピソードはよく知っているはずです。また、イスラム圏でも聖書のエピソードはよく知らせています(『コーラン』ーー最近は『クルアーン』という表記も増えていますね)にはイエス・キリストは「イーサー」という名前で出ています)。これは「古典」と言ってもいいでしょう。ギリシャ・ローマの古典的作品とともに、記憶しておくべき存在でしょう。

 もう一点。「J-Pop」という記述がポツンとありました。これについては、山下達郎「クリスマス・イブ」について触れている方がいました。山下の傑作アルバムMelodies (1983) に収録されいてるこの曲、当初は地味な存在だったのですが、JR東海のCMで有名になり、今でもクリスマスになるとどこかから流れてくる曲になりました。動画をみると、さすがに時代を感じます。最初のCMは31年前ですからね。

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このCMなどをきっかけに、「クリスマス・イブ」という曲は、少なくとも日本国内では「古典」になったといえるでしょう。ただ、この曲は、今のところは「時代」は超えたかもしれませんが、「民族」「地域」は超えていないかもしれません。

 

 この件については、現在進行中で興味深い事例があります。みなさんYouTube で、元祖J-Popの一人とでもいうべき竹内まりや「プラスティック・ラブ」という古い曲がダフト・パンクの曲とミックスされたりして、かなり流行っていることをご存知でしょうか。まあとにかく聴いてみて下さい(これと似たようなアップロード動画がいくつもあります)。

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 コメント欄が各国の人たちによる英語の書き込みが殺到していますね…。この件については、竹内まりやのパートナーである山下達郎が今年のツアーで「俺もまりやも驚いている。こんなことになるとは思っていなかった。せっかくだから今日は歌うよ」と言って、達郎ヴァージョンで披露してくれました。すごかったです(昔の達郎ヴァージョンもYouTubeに上がっていますーー気に入ったらぜひJoy (1989)というライブアルバムを購入して聴いてください!)。

www.youtube.com

 

 それはともかく、「プラスティック・ラブ」という30年以上前のJ-Popが、「時代」「民族」「地域」を超えるかもしれない「古典」として再発見されているプロセスがここにあると言ってもよいでしょうね。

 授業でも触れましたが、「古典」については、昔からずっと議論になっていますし、今も議論になっています。その一端を知りたい方は、この討論会

blogos.com

と、この討論会の書籍版を見てみるといいかもしれませんね。

bungaku-report.com

 

 個人的には、私は英文学者なので、英語圏文学の「古典」について議論ができればいいなと思っています。そのためにも、例えばT・S・エリオットの古典論などが読みやすい日本語で簡単に入手できればいいのですが…。どうせなら、ということで、英語の原文を掲載したサイトを紹介します。'Tradition and the Individual Talent' (1919)というエッセイです。

www.poetryfoundation.org