拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

巽孝之『「2001年宇宙の旅」講義』(平凡社新書、2001年)

町山本と一緒に買ってみた(3年遅いが)。でも、大体内容は想像できるような気がするのだよな。

どうも私はSF作品が苦手で、そして映画もほんっとに観ておらず、──これは家庭環境が大きいと思う──巽さんの本も小谷さんの本も、そしてジェイムソンも『政治的無意識』はいいんだが『ポストモダニズム』はダメというか腹の底から分かったという気がしない。あまたある映画論もさっぱり。だから阿部さんや星野さんの小説も読んでもこうなんというかがっちり"tune inした"感じがどうもしない、けっこう面白いんだけど。
21世紀に生きる人文系研究者としては、致命的だとは自覚している。
ついでにいうと、音楽ならまあ多少聴いているわけだが、でもたとえばツェッペリンやクリムゾンの海賊版を漁ったりはしても、ザッパやイーノからさらにディープな方向に進んでいくというコアな聴き方はしなかったので、音楽ヲタを名乗る資格もない。
ガキのころは有名どころのハードロックとフュージョンしか聴いていなかったから、しかもベースヲタだったので、キーボード・プレーヤーの視点からの巽さんのプログレ論(『プログレッシブ・ロックの哲学』)もまあ議論はいいけれど、全身全霊を賭して読めない。http://www5b.biglobe.ne.jp/~alipro/pr.html
学生に対しては、「オレ教養すっからかんで本当にスマン」と心の中で謝っている毎日。

そのかわり、いい年くってからトリュフォーみても大島渚みても『網走番外地』を観ても「すげーおもしれー」と騒げるし、巽さんの本でこれまで食わず嫌いだったイエス『リレイヤー』(1974年)を聴いて「おーいがいといーなー」と騒げるし、去年の春の博論授与式の会場でワーグナーマイスタージンガー』序曲聴いて心から感動できたし等々、私的にはそんなに不幸せでもない。