拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

筑波大学文化批評研究会編『〈翻訳〉の圏域』(2004年)

600頁近い、多様な日本語の書き手の論集は、やはり読み応えがありました(市販はやはり難しいか・・・)。
 いろいろ面白い論文がありますが、私的には岩尾龍太郎「ヤクザン・ロック・ロビンソンーー十八世紀英国のイスラムインパクト」(439−54頁)が面白かった。

本稿は、1知られざるヤクザン物語を紹介し、2これが一七世紀末からのアラビア学ブームにのって英国(のちにヨーロッパ中)に広まり、ロック哲学成立の機縁となったこと、また3奴隷貿易・海賊・置き去りという文脈から素材的内容を得てきたはずのロビンソン物語に「孤島に漂着した個人のけなげなサバイバル」という理念的モデルを提供し、4さらに独仏におけるロビンソン変形譚が成人男女の逃避型恋愛冒険や大家族共同体形成へと流れたときのルソーのカウンターパンチ(幼児が孤島で学習する物語として読むべし)を準備したことを略述するものである。(439)

「略述」ではなくて、本格的論考を読みたいものだと思いました。