拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

アイヌ語地名の奔流

北海道生まれだからといって、あるテクストの中に出てきたアイヌ語地名にすぐさま反応できるわけではない。やはり知識と関心がなければ無理だ。
以前、ハードカバーで『フィネガンズ・ウェイク』を読んだときには、興部(おこっぺ、これはさっき発見した)や千歳(これは空港所在地なので全国区だろう)くらいしか反応できず、付箋紙もちょこっとしか貼らなかった、記憶がある。
ついさっき、ジョイス&柳瀬の熱狂に憑依されつつ第一巻を読み終えたところ、およそ二カ所において北海道のアイヌ語地名が集中的に使われているところがあって、付箋紙貼りまくりになってしまった。
そのうちの一カ所には日暮里や阿蘇や酒匂や川内や野辺地が出てきて(東北は結構ある)、すべてがアイヌ語地名という訳ではないのだが、ざっと数えると、アイヌ語地名2に対して他の日本の地名1くらいの割合のようだ。
これ、「内地」(私も今は「内地」人だが)の読者はわかるのかいな?

柳瀬さんは北海道の東端、根室市の生まれということだが、この根室から釧路にかけての海岸線には本当に無茶苦茶にアイヌ語地名に漢字を当てたところが相当ある。それはもう奇々怪々、というか漢字というよりほとんど西夏文字にすら見えてくる。(暇な人は詳しい道路地図を参照すべし。)
こういう奇々怪々な漢字当て字アイヌ語地名に慣れた人間にとって、例えば「堕侮吝」(ダブリン)とかいう当て字位ではどうってことないのだ。

しかし、なぜアイヌ語地名なのか。
愛蘭=アイヌモシリ(蝦夷地=北海道)?
これはあまりに短絡的すぎる結論だけれども、少なくとも私に大いなるインスピレーションを与えてくれるのだ。
ちなみに、かつてアイヌは「愛奴」と表記されたこともあった。むろん、今はこんな表記は許されないのは言うまでもない。