拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

中野好夫集

2学期(筑波は3学期制なのだ)は中野好夫の話を講義でやるので、筑摩書房の『中野好夫集』を最初から読み始めている。再々読かな?4回目くらいかな?
戦時中の英米文学者の問題をやるとき、「私は戦争に協力しました」と繰り返すこの人の文章が念頭にあったような気がする。最初は嫌な爺だと思ったものだが、法人化に「協力」した今の私には、この人の文章がつくづく痛いし、吐き気が出る。

博士論文で私は中野の「戦争協力」を具体的にリストアップしたわけなのだが、それは決して人ごとではない。人ごとではないからこそ、少なからぬ「中野たち」の、安全地帯からの、単なる口先だけの精神論ではない具体的な苦闘−−死んでも抵抗せよという考えは私は嫌いだ、ただし例外はあって、人を殺す位ならば自分が死んだ方がマシだとは思う−−を掬い取りたかった。
そこのところを10人に1人くらいは読み取ってもらえるような、そしてその1人には何らかの肯定的なメッセージを伝えるような言葉を書けていただろうか。

というわけで、博士論文の著作化の具体的作業がそろそろ始まることになりそうである。