拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

マンガ蟹工船

マンガ蟹工船

マンガ蟹工船

はまぞう」が楽天とアマゾンの両方に対応するようになったのですね。ポイントをためている方から買えばいいわけだ。ポイント流行の世の中だなあ。
それはそうと、このマンガ、悪くない。
以前「日経」の広告で表紙の絵を見てこりゃだめだと思ったのだが、──はまぞうの画像でもおわかりでしょうが、口をへの字に結んだ、階級意識に目覚めた労働者の、平板に記号化された絵が全編を覆い尽くしているのかなーとか思ったのだ──いやいや丁寧で迫力ある絵だし、例えば事実上の主人公(だと私は思っている)浅川さんの悪者ぶりは際だっているし、小林さんの遺体を囲む家族のシーンを外枠にしたのも、左翼への弾圧など全くワケワカラン若者に時代性を理解させる工夫もある。くだくだしい解説よりも効果的だと思った。小林さんの原文の挿入も適当にある。あと、この小説のメッセージよりも、文体の奇妙さや小林さんの暴力への志向(という言い方はアレかもしらんが)に焦点を置いた「解説」も、『蟹工船』は単純化されやすいメッセージだけの作品ではない、なめるように読むべき価値のある文学作品なのだという、文学教師として正しく啓蒙的なものでしょう。
というわけで、みんなで『蟹工船』を読むべし。そして、このような状況は現代でもあり得るのだということを知るために、有名なサイト、『【軍曹が】携帯電話開発の現状【語る】』も読むべし。これネタだろという人もいるようだが、私、20年近く前、同じ下宿にいた人が、同様の業界において同様の過酷さを経験したことを知っている。ネタではないと思う。