拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

古本屋

札幌のすすきのにあるデパート(昔は松坂屋だったけれど、今はなんていったけ)の向かい、東急インの向かいと言った方がいいだろうか、ともあれそんな場所に石川書店(だったと思う)という古本屋がある。先日、翻訳の仕事を進めるために札幌で調べものをしたついでにふらっと立ち寄った。
目に付いたのは「北海道文学」についてのエッセイや研究書。「内地」の作家が北海道をどう表象したのか、例えば国木田独歩あたりから丹念に調べている本なんかがあったりして、――柄谷行人日本近代文学の起源』を思い出しますね――おもわず4冊ほど買ってしまった。後期の「表象文化論」ではいよいよ北海道表象をやろうと思っていたので、渡りに船である。
「内地」作家が「外地」北海道をどう表象するか、だけではない。この古本屋には小檜山博という作家の作品が結構あった。JRで札幌/帯広間を往復すると、まず間違いなく"The JR Hokkoaido"なる広報誌を手に取ることになるが、小檜山さんはここに短いエッセイを連載している。知らないうちに読んだ人は結構いるに違いない。実はこの人は、北海道で創作活動するということの問題をかなりつっこんで考えている。まだ作品をそれほど読んだわけではないが、そのうち紹介できると思う。
こういうことがあるから古本屋通いはやめられない。大江健三郎万延元年のフットボール』の英訳タイトルは"the silent cry"である。古本屋には"the silent cry"が響いている。