拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

加藤壽々子のコンラッド翻訳

コンラッド『オルメイヤーの阿呆宮』(1895年)の翻訳、加藤壽々子訳『南海の望楼』(1943年)が届いた(←をクリックすると画像がでます)。1940年に出版された大澤衛訳とちがって、露骨に時局的な解説はつけられていないが、出版社の名前がすごい――「三亜書房」。ところで、訳者の加藤壽々子という人は、1925年にこの小説の翻訳を日本で始めて世に出した加藤朝鳥の夫人だった人で、朝鳥の死後は「女性展望」などの雑誌編集をやっていた、と訳者紹介に書いてある。河上徹太郎ではないが、時局を見計らって、夫の仕事を世にだしたのだろうか。そうだったんじゃないかとは思うのだけれど、現在のところまだウラを取っていない。朝鳥については、立命館の西さんから、吉上昭三ポーランド文学と加藤朝鳥」(『ポロニカ』、90、恒文社、1990年)という論文を送っていただいており、読んだが、これは朝鳥とポーランド文学との関係を探った論文であり、英文学者としての仕事を検証したものではない。というか、私の場合は、加藤壽々子の仕事をチェックしなければならないのだった。