拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

パトレイバー旧OVA×

でした、私には。
正月再読したマンガ版はずいぶん面白かったんだがなあ。
道警の不祥事で盛り上がっている北海道では、警察がひとまず正義の味方というこのOVAを嬉々として観るのがつらいということなのか。
閑話休題
マンガ版を読んでいて、泉野明の実家の酒屋が北海道某所という設定になっていて、なぜか直感的にこれは苫小牧近辺だと思ったのだが、旧OVAではまさに苫小牧だった。しかし、篠原と泉がのっていた(たぶん)新千歳空港に向かう列車が蒸気機関車になっていたというのはいかがなものか。ニセコ号でもあるまいし。
故金◎氏のおかげでもっていかれたリニアモーターカーくらい出してくれてもよかったのになあ。

・・・と、こんなことを書くのは、筑波の表象が対照的だったから。
マンガ版(文庫版第1巻)で、イングラム搭乗員の選抜試験が行われたのは筑波の篠原重工の研究所で、マンガでは1999年の設定なのだが、2005年の現在よりもはるかに発展した電脳都市として表象されていたり(高層ビルが何棟もある)、敵役のシャフト・ジャパンの黒いレイバー、グリフォンは、つくばの隣の土浦研究所で制作されたもの。
あの筑波近辺は磯崎新ポストモダン建築もあって、わかりやすい近未来の象徴なのだろう。
で、北海道はというと、マンガでも旧OVAでも、「田舎」の象徴。
このあたりがなんかつまらん。
実際の北海道はもっとダイナミックなのだ。
例えば「地の果て」稚内などは、天然ガス採掘国際プロジェクト「サハリン2」の日本側基地になっているわけで、「地の果て」どころか日露(&英米)の利権やハイテク技術、そして人々がうごめくクロスロードになっていたりするし、このプロジェクトを見込んで新千歳空港の拡張や、とっくの昔に死んだ「苫東」や「石狩湾新港」をもう一度復活させようという動きもあるらしい。別に開発万歳するつもりはないのだが。

なぜ北海道=田舎のパターンがこうも続くのか、その理由をつらつら考えるに、『パトレイバー』にしても『攻殻』にしても、特に後者はサイバーパンクの影響が大なわけだが、これはどうしてもアメリカの視点になりがちで、さらにいえばサイバーパンク以降のアメリカの日本サブカルヲタは関東周辺しか目配りができていないようだし、要するに極東&ロシアの視点がないからではないかと愚考する。
ヘッドギアやガイナックスに、北大スラ研や札大ロシア語出身者(今福龍太主義者とか笑)を送り込むのが面白そうだ、とか妄想は続く。

注1
旧OVA第7話、「特車2課、北へ」は、新潟に向けて走るトラックに赤いレイバーが搭載されているという話だが、できれば新潟からウラジオあたりへ渡ってくれれば話的に面白かったかも。

注2
士朗正宗『攻殻機動隊』では、択捉島までリニアモーターカーが通じていて、それで一つネタが出てきていた。2029年の択捉島は「旧型の電脳都市」(といってもすさまじいが)になっている。(07: Phantom Fund)だから、原作では士朗のヲタ妄想パワー全開でちゃんと「北」も取り込んでいるのだったが、押井映画ではフツウに「近未来香港」になっているということだ。別にそれが悪いわけではないんだが。