拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

コラージュ・ノンフィクション

王道楽土の戦争 戦後60年篇 (NHKブックス)

王道楽土の戦争 戦後60年篇 (NHKブックス)

『イジ・コラーシュの詩学』を読み終わったに「コラージュ・ノンフィクション」を宣言するこの2冊を読んだ。コラージュというより三題噺というか大喜利という気もしますが、三題噺がうまくいっているのは最初くらいかな、あとはこれまで吉田さんが書いてきたことを切り貼りしたという印象。これはちょっとコラージュとはいいがたい。
3点ほど。
(1)石原慎太郎さんに伊藤整さんが「君の文学には植民地的なところがある」云々という評言については、この本では吉田さんは触れていて、これを実際に石原さんにインタビュー、当人は言下に否定したとのこと。
(2)国産み神話で海に流された「蛭子」(ヒルコ、エビス)とは、実は農耕弥生人に駆逐された海神縄文人であ〜る(笑)云々は、この枠組み自体は例えば私のようなド素人でも網野さんとかをちょっとでも読んでいればわかることだけれど、あの手足のない「ヒルコ」のことはまったく忘却していたので◎。しかし、このネタが(3)につながるのがちとつらい。
(3)吉田さんの父親が両足に障害があって極貧だったことをダイレクトに書いているあたりは、読んでいてつらい。吉田さんはさまざまな「情」をくみ上げたい人だと思うし、そこは私も評価したいのだが、このように書かれるとこの先がないよ、という気がする。この人お得意のふざけた文体があるにしても。