拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

"He made love to Bimi"

そのうち画像がでるでしょう。

もうひとりのキプリング―表象のテクスト

もうひとりのキプリング―表象のテクスト

上石さんはほぼ同期、だからいくつかの章は口頭で聞いているので、そのときの印象を思い出しながら読む。で、やっぱり私にとってはキプリングの変態短編小説、「ベルトランとビミ」("Bertran and Bimi", 1889)を論じた第1章が、よい。

新婚生活の日がまだ浅いうちに、ベルトランは妻を殺害された。内側から鍵が掛けられた部屋の中で妻は死んでいた。もはや人間の形状を留めずに"stuff"と形容された妻の死体、壁などに付着した身体の欠片が散在していること、部屋の天井が突き破られてできた大きな穴、これらは、妻の殺人犯がビミであったことを容易に想起させるものである。フランス人のベルトランは、脱獄囚と噂されているナチュラリストである。彼は何らかの理由でフランスを離れ、マレー諸島に独り移り住み、一頭のオランウータンを一つ屋根の下で生活を共にしていた。このオランウータンがビミである。(1-2)

エログロ小説にしては余計な「ナチュラリスト」とか「マレー諸島」などの設定を解き明かしていく第1章だが、元畜産系大学BSE兇員としては、章のタイトル「ペットになった〈動物/人間〉たち」という問題設定とこのキモおもしろすぎ小説を世に紹介してくれたことをとにかく感謝したいのだった。