拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

私について

オムニフォン―“世界の響き”の詩学

オムニフォン―“世界の響き”の詩学

あーーーーー、せっかく引用したのに消えた!×てなのアフォー!
仕方ないのでもう一度引用。
ハイチの作家フランク・エチエンヌさん、もといフランケチエンヌさんの自己命名について。

フランケチエンヌとみずから名乗ることで、彼は彼自身の子供、彼自身の父親となった(中略)。そのように自分に再洗礼をさずけるとともに、フランケチエンヌは叫びの生涯をはじめたのだった。私は書く、私はみずからを書く、私は私の叫びを書く。もっとも個人的な孤独の叫びという発話が、望めば誰でもそこに住みつくことのできる「私」という共有場を設定する、文学の根源的な逆説。その逆説に気づくためだけにでも、ぼくにとっては翻訳という迂回を歩む必要があった。(275)

拙著第五章、「英文学者、中島敦」の議論と重ねていろいろ考えたくなるこの章。タイトルは「さまよい」。