拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

ギルバート&ジョージ!

愛と戦いのイギリス文化史―1900‐1950年

愛と戦いのイギリス文化史―1900‐1950年

今の学部生や(若い)院生は、この本からイギリス文化史の勉強を出発できるのだから、何とうらやましいことか。7章とか12章とかは学部生にはちょっと難しそうですが、院生なら読めなきゃダメ、と言ってもいいな、と。
ところで、第四章「ミュージアムの冒険」(横山千晶さん)を読んでいて、おお!と思ったところがありました。

高架下の壁にミュージアムの広告ポスターが貼ってある。イースト・エンドに新しく開いたホワイト・キューブというギャラリーの広告だ。いま開催されているのは、前衛芸術家でありパフォーマーである、ギルバート&ジョージの展覧会だ。なにしろ、うんちや体液、男の人のモノがそのままステンド・グラスを飾る彼らの作品は、ある意味で冒涜以外の何物でもない。しかし難解な現代芸術ではなく、誰もがわかる「万人のための芸術」が、因習的な芸術表現に抗う彼らのモットーだ。(pp.87-88)

今年の春、テート・モダンに行った私は、このオッサン二人の大回顧展をじっくり見て心の底からキモイと感じ、そして無茶苦茶多くの人たちが見に来ていたことに驚いたのだったが、横山さんの言葉を読んで納得したのだった。あれ、多くの人が平等にキモイと感じてしまうが、しかしキモイもの見たさについついきてしまうという大衆アートだったのだな。
さすがにうんこはなかったと記憶するのだが、いやどうだったかな、もしかしてあったかな、あっても記憶から落としているのかもしれないな。