認知物語論キーワード
- 作者: 西田谷洋,日高佳紀,日比嘉高,浜田秀
- 出版社/メーカー: 和泉書院
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: 単行本
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しかしながら、この研究を通してまず知ることができたのは、文学研究がいかに「意味」や「解釈」を前提としているかということ、そしてそこから自由になることの困難さである。文学研究において「理論」的なアプローチをすることは、テクスト内外の「意味」の磁場から言説を引き離し、言葉の編成それ自体を検討することから始まるはずだ。「認知」という、身体を基盤とした共通のフレームからの言説の捉え直しには、「意味」の呪縛からわれわれの認識・思考を解き放つ可能性が開かれている。(103頁)
もし、認知的な文学研究がうまくいけば、それはいくつかのことをもたらすかもしれない。認知科学は人間の一般的な認知構造を探求するものであり、これを推し進めることは、傑作史観・英雄史観から自由な文学分析の建設にもつながるだろう。文学の認知的分析には幻想は禁物だが、可能性もまた含まれているのである。(24頁)
「幻想は禁物」だと禁止されているけれど、「傑作史観・英雄史観から自由な文学分析の建設」というのは、『オリエンタリズム』のような言説分析にこそふさわしいということになるのだろうか。