拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

ナチカル

東大助手の佐藤卓己さんの論文を見つけた。その最初だけ、引用する。

ナチ・第3帝国・ヒトラーゲッベルス,そのいずれからも連想される言葉は「宣伝」である。総統ヒトラーと宣伝大臣ゲッベルスドイツ国民を戦争に『駆り立てた』技術は神話化され,今日に至っている。だが,この「宣伝の魔力」なる神話こそ,ナチズムが創作し戦後のドイツ国民が自らの罪を忘れるために再生産してきた情報操作ではなかったか。「ナチ宣伝」は「宣伝神話」として,今なお生き続けている。

「宣伝の魔力」なる絶対的な悪を捏造し、その悪に対して卑小な「私」を見いだす。「私」は卑小だったから仕方がなかったのだ、という論理である。
コンラッドはこういう論理を生きなかった人である。「宣伝の魔力」と卑小な「私」の共犯関係を脱構築的に書いた、いや思わず知らず書いてしまったのである。どうしてこんなことが可能だったのだろう。この問いを常に意識するのであれば、僕はコンラッドの「伝記研究」をやり直してもいいと思う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
注記(2006年3月12日)
佐藤さんも今やメディア研究のトップを突っ走る人である。△の論文の内容は▽の本などに盛り込まれている。

ヒトラーの呪縛

ヒトラーの呪縛