立岩&上野
札幌に帰省したので、話題のマイカル小樽に行く。なるほど巨大であるが、巨大過ぎて買い物を楽しめない。三年程度で倒産しないことを祈るのみ。そのマイカルの一角にビブロスなる本屋があったので、立岩真也『私的所有論』(勁草書房、1997)を購入。
- 作者: 立岩真也
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1997/09/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 上野俊哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/04
- メディア: 単行本
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・・・少なくとも私にとっては、この社会でごく普通に起こっていること自体が問題だった。「私が私の働きの結果を私のものにする。」それでよいのか。同時に、そこから私達は抜けられるのか。頭がわるい。体がわるい。それでできない。そのことで不当な利益を受けていると言う人がいる。実際このようにこの社会は構成されているのだから、これは全く正当な指摘であり、この社会の構成の基本的なところを問題にしたのだから、根底的な指摘だった。しかし、その提起は結局どうなったのか。(中略)もう一つの話は、結局いろいろやってみてわかったように「市場経済」で行くしかないのだし、行くのがよいのだし、そこにまずいところがあれば、「福祉国家」か何か、手を打てばよろしい、このように終わる。しかし、それで終わっているのか。なにごともなく平穏無事だという安穏な主張を受け入れない。しかし、言い放しの批判にも与することができない。「能力主義」「業績原理」が問題だとしてそれを一体廃棄することができるのか。そしてどんな代替案があるのか。(3−4)
このように問題提起する立岩さんは、「他者」のことを考えざるを得ないと説くに至る。「他者」――なんだか結論が見えてしまうようだ。実際、この本の結論は新しくない。しかしそれはどうでもいいことだ(この「新しさ」に対する懐疑は、多少ものを考える人間ならば、誰でも共有するはずだ)。立岩さんの仕事の意義は、我々が考えそして選ぶべき選択肢を整理してくれたこと、そしてその整理のプロセスを愚直に、500頁にわたってつづってくれたことである。このしつこさを学び取りたいと思う。第9章「正しい優生学とつきあう」については、英文学者のNさんやKさんの読書感想を聞きたいものである。
文句がある。この本は6000円もする。これは高い。こういう本こそペーパー版にして売るべきだ(注:立岩さんの文章は、こういう「ぶつ切り」スタイルなんです、僕は意外に好きですね)。
上野さんの本は、これまで彼が所々で書いてきた論文をまとめたもの。まとめて読めるのは便利なので、お買い得ではある。
(追記:この本の「著者紹介」を読まれたい。過剰である。上野さんという人はこんな風に「自分史」を語る人だとは思わなかった。正直吃驚である。どうしちゃったんだろう。06/05/99)
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注記(2006年3月12日)
その後、マイカル小樽は店名を変えつつ、迷走を続けている。