拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

4年半たってもまだ論文にしていないネタ

Miwa Akira, Trans. Light, Wind and Dreams (Hokuseido Press, 1965)が教育大函館分校から届く。また教育大函館である。なぜか私が読みたい本は函館にあるようだ。早速コピー、'Translator's Preface'を読むと、この翻訳書の初版は1962年だが、この年はサモアが独立した年でもあるとある。知らなかった。不覚。
それはそうと、この本、ある意味、すごい。実はこの本は北星堂からでた教科書である。本の後半はちゃんと語注になっており、大学の教養課程用教科書として世に出たのであろうことがわかる。しかし、かなりの部分、スティーブンスンの文章の日本語訳といってよい『光と風と夢』をまた英語に訳しなおし、それを教養英語の教科書として売り出し、日本人学生に読ませようというのは、一体何なのか。翻訳者の三輪さんは、戦時中に『光と風と夢』を読んだとき、ああこの中島という人は世界中の誰よりもスティーブンスンのことをよくわかっていると感激した。その感激がこの英訳を生んだ原動力になったと書き記している。スティーブンスンのよき理解者中島を世に出したい。多くの若い人たちにわかってほしい。しかしそれならまずは『光と風と夢』を日本語で読ませ、英語の勉強としてはスティーブンスンの『ヴァイリマ・レターズ』でも読ませたほうがよかったのではないか。あるいは三輪さんの真意は日本人学生の英語力向上ではなかったのか。この本を英語で読んだ学生がイングランドに出かけて、イングランド人に対して、「スティーブンスンをよく理解したNakajima Atsushiという作家がいる。作品はLight, Wind and Dreamsだ。どうだ、すごいだろう」云々と語ってくれることを夢見たのだろうか。ずっと考えていると、よくわからなくなってきた。三輪さんは、この本をどこにアドレスするのかなんて特に考えていなかった、というのが正解なのかもしれないが。
ちょっとしたきっかけがあったので、これまで日本語で書いてきた中島&RLS論を英語で書きはじめた。英語で論文を書くのは三年ぶりだ。一応英語は頭から出てくるので、まあ何とかなりそうだ。それにしても、河上徹太郎亀井勝一郎のアヤシイ文章を英語に直すのは骨だ。「海ゆかば」なんてよほど丁寧な注をつけないと誰も理解できないだろうから。あれやこれやで気がついたらもう夜だ。