拓殖のあと

はてなダイアリーから引き継ぎました。(2018年8月31日)

『耳の悦楽』読了

ハーンのネイティブ・インフォーマントとしての小泉セツに、(自伝を書き起こすジェインではなく)聞くことに徹する「人間家具」のエレン・ディーンに注目する西さんの語りには引き込まれるものがあった。文字中心の世界ではなく、「耳」の世界に注目するところ、特に第一章はかなり刺激された。しかし、これは「耳の〈悦楽〉」なのか。無論、彼女たちの痛みはちゃんと指摘されているのだが、「悦楽」と言い切るのには、かすかな違和感を感じた。そうであってほしい、という西さんの希望の言葉として受け止めておきたい。